結論:160Wh以下・1人2個・預け入れ禁止・機内では使わない
2026年4月24日、モバイルバッテリーの機内ルールが変わった。国土交通省航空局が同年4月14日に公表した資料に基づく変更である。結論を先に示す。
- 預け入れは全面禁止。スーツケースに入れて預けた時点で違反になる
- 160Wh超は機内持ち込みも不可。預け入れもできず、運ぶ手段がなくなる
- 【新】モバイルバッテリーは1人2個まで。容量にかかわらず合計2個で、10000mAhの小型品でも同じ
- 【新】機内でバッテリーへの充電も、バッテリーからの給電も禁止
- 座席上の収納棚に入れない。座席ポケットなど手元で保管する
- Wh表記が確認できない製品は、JALでは輸送できないと明記されている
- 3.7V換算で約27,000mAhが100Wh、約43,000mAhが160Whの境目になる
作業服用バッテリーの扱いは空調服バッテリーは飛行機に持ち込める?を参照してほしい。
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早見表:mAhからWhへの換算と持ち込み可否
国交省が示す計算式は「ワット時定格量(Wh)=定格容量(mAh)×定格電圧(V)÷1,000」。公称電圧3.7Vで換算すると次のとおりだ。
| 公称容量 | Wh(3.7V換算・計算値) | 区分 | 機内持ち込み |
|---|---|---|---|
| 5,000mAh | 18.5Wh | 100Wh以下 | 可(モバイルバッテリー計2個まで) |
| 10,000mAh | 37Wh | 100Wh以下 | 可(同上) |
| 20,000mAh | 74Wh | 100Wh以下 | 可(同上) |
| 27,000mAh | 99.9Wh | 100Wh以下(国交省のラベル例示と同値) | 可(同上) |
| 30,000mAh | 111Wh | 100Wh超160Wh以下 | 可(100Wh超の予備電池と合算で2個まで) |
| 40,000mAh | 148Wh | 100Wh超160Wh以下 | 可(同上) |
| 43,000mAh | 159.1Wh | 100Wh超160Wh以下 | 可(実質的な上限付近) |
| 45,000mAh | 166.5Wh | 160Wh超 | 不可(預け入れも不可) |
※3.7Vを前提とした計算値である。判断は必ず本体ラベルのWh表記、またはラベル記載の定格容量・定格電圧で行うこと。
市販の主要モデルはほぼ100Wh以下に収まる。20000mAhクラスまでなら容量の心配はなく、論点は「何個持つか」に移る。
変わったのは3点だけ
国交省は新ルールを「従来のルールからの追加分」として3点に限定している。
- 機内持込みのモバイルバッテリーは2個(160Wh以下に限る)まで
- 機内においてモバイルバッテリーへの充電をしないこと
- 機内においてモバイルバッテリーから他の電子機器への充電をしないこと
背景はICAO(国際民間航空機関)の国際基準緊急改訂で、ICAO理事会が2026年3月27日(現地時間)に承認・即日適用した。日本は告示と通達を改正し、約4週間遅れの4月24日から適用している。
一方、預け入れ禁止・160Wh上限・端子の絶縁処置は従来からのルールで、収納棚に入れない項目も2025年7月8日に先行して始まっている。「4月に全部変わった」わけではない。
罰則がある項目とない項目が分かれている
7つの項目は法的な重さが同じではない。国交省資料が「違反した場合、航空法により罰則が科される可能性があります」と注記するのは、預け入れ禁止・160Wh上限・短絡防止・2個制限・機内での充電禁止の5項目だ。収納棚に入れないことと、バッテリーから他機器へ給電しないことの2項目にはこの注記がない。定期航空協会の共同リリースでも同じ2項目だけ印が外れており、協力要請という位置づけである。ただし乗務員の指示に従う必要は変わらず、実務上は7項目すべてを守る前提で準備したい。
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「モバイルバッテリー」と「予備の電池」は別区分
国交省は両者を定義で分けている。モバイルバッテリーは他機器を充電する目的でリチウムイオン電池を内蔵したもの、予備の電池はカメラ等の予備バッテリーや機器から取り外したものだ。
2個制限がかかるのはモバイルバッテリーだけだ。予備の電池は100Wh以下なら個数制限がなく、予備を何本も持つカメラマンは従来どおり問題にならない。ただし100Wh超160Wh以下では両者を合算して2個までとなる。
| 100Wh超〜160Wh以下のモバイルバッテリー | 100Wh以下のモバイルバッテリー | 100Wh以下の予備の電池 | 100Wh超〜160Wh以下の予備の電池 |
|---|---|---|---|
| 2個 | 持ち込み不可 | 個数制限なし | 持ち込み不可 |
| 1個 | 1個まで | 個数制限なし | 1個まで |
| 0個 | 2個まで | 個数制限なし | 2個まで |
さらに2026年4月24日からは、予備電池は電子機器本体とあわせての輸送が必要で、単体では輸送できないという条件がJAL・ANA双方の公式サイトに記載された。
また同じ100Wh以下の予備電池でも、JALが「数量制限はありません」とする一方、ANAは「一人あたり20個まで」と上限を設けている。国の基準より各社が厳しいルールを敷く場合があり、利用会社の規定が優先される。
Wh表記がない製品はどう扱われるか
ここは航空会社で書きぶりが分かれた。JALは「Wh数が確認できない場合は輸送の可否を判断できないため、輸送できません」と明確に不可とする。ANAは「ワット時定格量(Wh)の記載が無い場合は、以下の計算式にてご確認ください」として算出を案内し、確認の余地を残す。安全側に倒すなら、Wh表記か定格容量・定格電圧の表示がある製品を選ぶべきだ。
現実的な問題として、編集部でUGREENとAnkerの公式製品ページを確認したところ、仕様欄には「10000mAh」といったmAh表記しかなく、Wh値は記載されていなかった。Wh値は本体に印字されたPSE表示の近くに、定格容量・公称電圧とあわせて記載されているのが一般的だ。搭乗前に現物のラベルを見る習慣をつけたい。
mAh→Wh換算が外れる2つのケース
**1つ目はリン酸鉄リチウム(LiFePO4)**だ。公称電圧が3.2Vと一般的なリチウムイオン電池の3.7Vより低く、同じmAhでもWhは約14%小さくなる。40,000mAhなら3.7V換算で148Whだが、3.2Vでは128Whとなり判定が変わりうる。
2つ目は5Vで計算してしまう誤りである。mAh表記はセル電圧(3.6〜3.7V)基準が通常で、USB出力の5Vをかけると実際より大きな値が出る。使うのは必ずラベルの定格電圧だ。
PSEマークは航空ルールとは別の話
モバイルバッテリーは2019年2月1日から電気用品安全法の規制対象となり、PSEマーク表示が義務化された。経済産業省が2018年2月1日に解釈通達を改正し、1年の経過措置を経て施行されたものだ。分類は「特定電気用品以外の電気用品」で、表示されるのは丸形のPSEマークである(菱形は対象品目が異なる)。
ただしPSEは国内販売のための規制であり、航空機に持ち込めるかを直接決めるものではない。PSE表示のない製品は国内で適法に流通しておらず、Wh表記も欠けていることが多い。
国際線:日本より厳しい国がある
同じICAO基準が出発点でも運用には差がある。100Wh超160Wh以下の扱いが最も分かりやすい違いだ。
| 項目 | 日本(国土交通省) | 米国(FAA) | 英国(CAA)・ICAO |
|---|---|---|---|
| 100Wh以下 | モバイルバッテリー計2個まで | FAAページ上は個数制限の記載なし(本人使用分) | 電源バンクは1人2個まで |
| 100Wh超160Wh以下 | 2個まで。事前承認の規定なし | 航空会社の承認が必要・最大2個 | 航空会社の承認が必要・最大2個 |
| 160Wh超 | 不可 | 不可 | 不可 |
| 預け入れ | 不可 | 不可 | 不可 |
| 適用開始 | 2026年4月24日 | ─ | 2026年3月27日 |
FAAは100Wh超160Wh以下について「With airline approval」、つまり航空会社の承認を前提と明記している。英国CAAも2026年3月27日から同じ枠組みだ。日本の国交省資料には事前承認を求める記載が見当たらず、ここで運用差が出うる。
日本発でも、運航するのが外国航空会社ならその会社の規定が適用される。国交省資料も「外国航空会社に搭乗する場合には、各航空会社の指示に従ってください」と注記する。なお米国の一部航空会社がさらに厳しい制限を設けたとの報道もあるが、公式サイトで直接確認できなかったため社名と数値の断定は避ける。
2027年1月にさらに厳しくなる可能性
JALは国内線の公式ページで、160Whという上限について「国際航空運送協会(IATA)の規定変更により、2027年1月以降は100Whに制限される可能性があります」と注記している。確定した変更ではないが、いま大容量モデルを買うなら100Wh(3.7V換算で約27,000mAh)以下を選ぶほうが将来的に安全側だ。
搭乗前チェックリスト
- 本体ラベルでWh、または定格容量と定格電圧を確認する
- モバイルバッテリーは2個以内にする(容量にかかわらず合計)
- スーツケースではなく機内持ち込み手荷物に入れる
- 端子を絶縁テープや個別のポーチで保護し、金属類と同じ袋に入れない
- 座席上の収納棚ではなく、座席ポケットなど手元に置く
- 機内では充電も給電もしない。機器の充電は機内備え付け電源を使う
- 国際線・外国航空会社利用時は、予約した会社の公式ページを直前に確認する
まとめ
実質的に増えた制約は、個数が2個までになったことと機内で使えなくなったことの2点だ。容量の上限は従来どおり160Whで、市販の主要モデルはほとんどが100Wh以下に収まる。最大の落とし穴は、Whが製品ページに書かれていないことである。出発前に本体ラベルを見る、それだけで大半のトラブルは避けられる。
本記事は2026年8月時点で国土交通省の公表資料、JAL・ANAの公式サイト、FAA・英国CAAの公表情報を確認して作成した。航空各社は国の基準より厳しいルールを設けることが認められており、運用は随時見直される。搭乗前には必ず、利用する航空会社の公式サイトで最新情報を確認してほしい。